父が失踪して早半年が過ぎた。
1月くらい居なくなることはあったので、
「また仕事のオカルトのネタ探しに熱中しているのだ」と気づくのが遅れたのが原因だ
実際、失踪届を出してからも、出版社や同僚などにあたってみたが、特に情報もなくいきなり消えた。
というオカルト本著者としては中々に面白い失踪の仕方だった。
といっても、子としてそんなことを面白がってられるわけもなく。
しかし、出版社の掃除のおばちゃんに
「ある高速道路から繋がるトンネルで面白いものを昔見たのでそれを見に行こうと思う」と言っていたことが発覚し、
半年遅れでこのトンネルに到着したというわけである。
このトンネルど田舎ということもあり、整備があまりされておらず
"オカルトで幽霊が出てきそうな"場所 というのにふさわしい場所だった
夜にこんなところを訪れたのは、もしかしたらあの親の子だからなのかもしれない。
そのトンネルの電灯は6割ほどが切れており明るい場所と暗い場所がまばらで、
暗いところから人が出てきたなら、まず間違いなく発狂するだろう。
入口の方はまだ点いている電灯が多かったが、出口に進むにつれ、
光は減り、出口は殆ど闇と言っても間違いではない
まぁ、勿論ライトを持ってきているので、それを頼りに出ればいいのだが
"何か"が後ろから付いてきている気がする。
勿論こんなところに人がいるわけがなく、足音もしないので
「雰囲気に飲まれたのだろう」と
しかし、そうやって誤魔化そうとする気持ちと裏腹に後ろに何かが付いてきているという
ドロドロとした気持ちは乖離し、どんどんと恐怖ばかりが膨らんでいる。
「じゃあ、確認したらいいじゃないか」と思う人もいるだろうが、
後ろを確認しなければ、"いない"かもしれないし"いる"かもしれないという
シュレディンガー状態で誤魔化すことができる。
背中半分が消えたのではないかと思えるほどゾッとする恐怖から逃げるため
そのトンネルに付いている非常用通路から外にでることにした。
コンクリート打ちっぱなしで、鉄?で出来た階段を駆け上がっていく
後ろから付いてきてる"何か"は諦めた様子はなくまだ付いてくる
鉄で出来た階段を音を立てずに登るなど、ほぼ不可能だろうから
その"何か"は足が生えているのではないのだろう。
第六感が「それを絶対に見てはいけない」と警鐘を鳴らす。
無我夢中で階段を登り、やっと出口の扉まで辿り着いた。
重く硬い扉を開け、ついに外に出ることが出来た
その扉を閉めるときに、つい"それ"を見てしまった・・・
悪魔のようで、死神のようで、趣味の悪いトランプのジョーカーの様で
持っているのは"そいつ"の身長くらいの大きさのハサミだった。
そいつは私が視認した瞬間"ニタリ"と笑ってハサミを空で切ったが、
その切った場所は次元が裂けているように、真っ黒な闇に染まっていた。
幸いに、そいつは扉を閉めてからは追いかけてこなかった。
父が出版したオカルト本の中に、
ある怪物が乗っていた
「二度見してはいけないモノ」
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